2010年に書いた
「玉岡児童公園ものがたり」 の続編です
じつは2015年に、以下のようなメールを送りました。
お返事はいただけてないのですが、読んでくださっていると信じていいかな・・・
株式会社スールキートス ご担当者さま
はじめまして、わたしは京都市在住の加藤わこともうします。
御社が映画
「マザーウォーター」の配給元でいらっしゃるということを知り、お願いのメールを送らせていただきますこと、お許しください。
もし叶いましたら、松本佳奈監督にご伝言をお願いいたしたく存じます。以下、長くなってすみませんが、どうかお読みいただきますでしょうか;
わたしは映画「マザーウォーター」のロケが行われました集合住宅の住人です。当時、映画のロケが行われるということで、住民たちは俄然盛り上がりました(笑)。
しかし、うちのようななんでもないところがどうして映画に?
さらにもっと、あのなんでもない公園がどうして?と話していました。
でも、わたしは、ひとりで納得していました。
あの公園には、すてきな
「公園のおじさん」がいるからです。
いまから10年ほど前、あの公園は草ぼうぼうで、とても荒れていました。
それを、近所の岩根さんという男性が、こどもたちが安心して遊べるような公園にしたいと思い立ち、毎日掃除をするようになりました。
きっかけは、ある日の新聞で「ニューヨークの割れガラス理論」を知ったことからだそうです。
ニューヨークのある公園が住民のちからできれいにしたところ、地域に目を向けるようになり、交流が生まれたと。この公園もそうなったらいいな、よし、自分もできることをやってみようと。
雑草をとり、芝生を植え、砂場の砂も入れ替えられました。それまで庭仕事はほとんどしたことがなかったそうですが、ネットなどで調べて勉強されたそうです。トイレの改修や、水まわりのことは、京都市と交渉して、改善されました。
公園がみちがえるように美しく、ひとが集えるようになったのが2008年のことです。このことを知ったのは、近所の方が作っている「住民だより」の記事でした。
岩根さんのことは、わたしたち大人よりも、息子のほうがよく知っていました。
息子はじめ、こどもたちはみんな岩根さんのことを「公園のおじさん」と呼んでいまして、すでに仲よしの関係だったのです。
わたしは全く知らなかったので、遅ればせながら、岩根さんにお礼を言いました。
岩根さんは、この公園、自分が整備した公園に、こどもの声が響くのがほんとうにうれしい、こどもの声が聞こえると元気がでる、それでまた頑張れると、にこにこ笑みをたたえながら言われました。
そして、2009年。映画のロケがあると聞いたとき、わたしはまっさきに岩根さんのことを思ったのです。
松本佳奈監督、またスタッフの方々は、もちろん岩根さんのことをご存知ないだろうけれど、きっとここに何かを感じられたのにちがいないと。。。そんなたいそうなものではなくても、さりげないけれど、なんか感じのいい公園だなと、思われたのではと思っています。
映画が封切られ、「京都シネマ」にかかるとき、わたしは岩根さんに伝えました。
岩根さんは映画のことを全く知らなかったようで大変驚かれました。「さっそく観に行きます」と。
数日後、うれしそうに、映画のパンフレットを抱えてわたしに観てきたことを知らせてくれました。
「ほんまに映ってましたわ!うれしいです」と。
5年後、2015年、公園には毎日たくさんのこどもが遊んでいます。
岩根さんにつづいて、ボランティアで整備するかたもあらわれました。
岩根さんは高齢なこともあり、体調を崩され、しばらく入院されていたのですが先月退院されてから、ほぼ毎日、公園に来て雑草とりをしています。まだ完全に回復されてないようですが、今の間に雑草をとっておかないとと言われます。
そして、あの映画のことがほんとうにうれしかったと、なんども言われました。
ご自身の仕事が、このような大きなかたちで取り上げられたことを誇りに感じておられると思います。
映画の持つ力の大きさを改めて知らされたこと、そして、いまもあの公園にはすてきな物語がつづいていることを、感謝とともに、松本佳奈監督にお伝えしたく、
また岩根さんのことを松本監督に伝えましたよ、、、と、岩根さんに報告できれば、たいへんありがたく、長々と綴ってしまいました。お読みくださりありがとうございます…(以下末文省略)
このメールにお返事をいただけたら岩根さんにお知らせしよう、、そう思って待っていたのですが、ないまま時が過ぎて、その間、岩根さんは再び入院されて、、、心配していたのですが、最近またお元気な姿で再び公園に来られるまでに回復されました。お医者さんもご本人も奇跡のようだと。
この日も岩根さんは黙々と雑草を引き、熊手で芝生の落ち葉を集めておられました。朝の陽がくっきりと木々を照らす美しい季節です。