もともと私は大きな声の持ち主だったと思う。
小学校の合唱の時間で、となりの子に
「あんたの声が大きくて歌いにくい」と言われ、萎縮してしまい、
以来、くぐもった声を出すうち、いつのまにかそれが普通になった。
バンドを結成して人前で歌っていたこともあったが、
そのときですら、おさえた声しか出せなかった。
もう名前も顔も思い出せないクラスメイトの一言を、
なぜそこまでひきずるのか、自分でもわからない。
子供の心はやわらかすぎて、いともたやすく周りの声を刻んでしまうということか。
その、長いあいだとざしていた私の声が、子供と童謡を歌ううちに、戻ってきたのだ。
「せんろはつづくよ どこまでも
・・・
たのしいたびのゆめ つないでる」
「はるかなまちまで ぼくたちの」の
「の」のあたりのメロディーが、涙が出るほど美しい。
大きな声で歌うと、耳管が共鳴し、骨をつたって頭の内側でびーんびーんと響きわたる。
子供が拍手して「もっとうたお」という。
声を封じたのは子供、解き放したのもまた子供。
うんうん、もっともっとうたおな~!