京都西陣町家スタジオの入り口にある溝のふたには
「私」と 書かれています
ご近所さんの もの知り師匠に たずねたらば どうやら井戸のある家の前に あるらしく
「自家用水路」の意味ではないか とのことでした
なるほど 「私の水」ということか 井戸のしるしね 謎がはれたわ~
「しかし こういうのも 自分が基準という京都人らしさ なんやろか」と 師匠がつづける
「だってな、ほらこれ、自分ちの方、向いとるやろ? 自分とこからみて読めるようになってんねん。
他人さんに読んでもらうんやったら 道のほうに向けなあかんやろ」
な なるほど 言われてみれば 確かにこれでは 自分の家のための「私」ということになる
毎日 門扉を開けるたびに 足元の「私」を確認する 私とは? ふむ なにやら哲学的
となりの庭からやってきた落ち葉に彩られ わたしの謎は 続くのでした
ふる井戸に 私の謎を 問うてをり