京都造形芸術大学ギャルリ・オーブにて開催されている
「地球の上に生きる2012 DAYS JAPANフォトジャーナリズム写真展」の
特別講演会「震災と原発問題」
広河隆一さん(DAYS JAPAN編集長)聴講録です
行きたいけど行けないという方が多かったのでがんばってメモしました!
長文ですが お読みいただければありがたいです
(もし誤情報ありましたらお知らせください。訂正いたします)
写真展は11月11日まで
開催されていますのでぜひぜひ..
(画像をクリックするとチラシPDF版がダウンロード出来ます)
【特別講演「震災と原発問題」広河隆一さん(DAYS JAPAN編集長)】
日時:10月30日(火)18時から19時半
参加者:約70名 学生さんと一般は半々くらい
(はじめに広河さんからの提案でギャラリートークに。展示されている
「第8回DAYS国際フォトジャーナリズム大賞」の入賞写真を見ながら)
・ 審査基準について。今回のテーマは2つ。震災と市民。審査のポイントは2つ。ジャーナリズムと写真のクオリティ。DAYSの場合は
ジャーナリズムに重きをおく。
・ 1位の林典子さんは写真を初めてまだ3、4年目という。写真のクオリティではベテランの作品のほうが優れているが、「いまここで何を撮るべきか」というフォトジャーナリストとしての視点が評価された。
・ 特別賞の岩手日報社の写真は、カメラマンではなく記者がコンパクトデジカメで撮ったもの。低画質でぶれているものもあるが、やはりジャーナリズムの観点から選ばれた。
・ リビア、ソマリア、コンゴの写真。リビアの写真を撮った写真家は受賞を喜んだ数日後リビアで亡くなった。
・ イラクの写真。戦争が収束したと思われるところに継続して出向き、戦争がもたらした悲惨さが時を経つごとに新たなかたちで現れ出すことを追うジャーナリストがいる。
・ ジャーナリストを立入禁止にするところは、そこが
危険だからではなく、見られたくないものがあるから。それを撮るために、何度でも立ち入る。
*
「福島の彼方に」のフォトジャーナリスト小原一真さんも来場。同会場に小原さんが撮影された福島第一原発ではたらく方々のポートレートも展示されています。12月にEU本部、来年N.Y.でも展示される予定だそうです
(席に戻って、スライド写真を見ながら講演)
・ 3月11日地震発生後、13日に福島に入った。
双葉町で計測器が振り切れる。チェルノブイリでも振り切れたことはなかった。そのとき政府は「放射能は漏れていない」と発表していた。
・ 川俣町で女の子が放射能測定を受けている写真。このような写真は雑誌掲載や展示ができないので、講演のときのみ発表している。
・ 日本にはじまったことではない。チェルノブイリのときも被害を最小限に発表。それがIAEA(国際原子力機関)。被曝検査カルテが保管された施設は3度も火災にあい、ほとんどが焼失した。
(ここから甲状腺がんの話に。
DAYS JAPANのブログに詳しく書かれていますので割愛します)
・ 久米島に母子の保養施設
「珠美の里」を設立、日本では唯一の常設の保養施設となる。シンボルマークは宮崎駿さんによるもの。久米島の海で1年ぶりに裸足で砂のうえに立つ子。はじめは「危ないから」と怖がって歩けなかった。(大丈夫だと言われ笑顔で駆ける写真が11月号の表紙に使われています)
(質疑応答)
Q:1歳の子のいる母親「知らされていない福島の現実、全国にひろがる内部被曝のおそろしさ。いま京都にいるわたしたちは何をすればいいか。」
A:広河「放射能による影響の度合いは個人差があり、わたしが大丈夫だから貴方も大丈夫とも言えないし、逆も言えない。精神的なダメージもある。
ほんとうのところ、世界の誰もわかっていない。放射線の高い地域の野菜や魚が、産地を偽って売られている。チェルノブイリでも同じ状況だった。どんなに避けても避けきれない。
いずれ測定して食べるのが普通になってくるのではないか。ひとりひとり市民が主体となって協力し合えるネットワークを作る。いわき市に
市民測定室『たらちね』があるので、参考にしてほしい。」
Q:学生「広河さんの『いい写真』の定義とは」
A:広河「まず、自分は写真家である前にジャーナリストであるので、ジャーナリストとして伝えることを重視している。
人間の尊厳が危ぶまれている現実を訴えているもの、人間の尊厳を讃えているもの。どんな小さな子にも尊厳がある。憐れみに訴えるような写真は、尊厳を損なう。
つぎに背景をきちっと写し込んでいるもの。そこがどういう状況にあるか分かるもの。さらに言えば、そこから何をしなくちゃいけないかが、伝わってくるもの。ぶれているとかはどうでもいい。次の何かを残す写真。
見ただけでは済まなくなる写真が、いい写真だと思っている。」
Q:学生「写真を見て絶望的な気持ちになる。広河さんが希望として見出しているものは。自分は農業に希望を感じているが。」
A:広河「
国会議事堂前のデモの写真がそれにあたる。60年安保のとき以来のうねり。今までこんなことはなかった。変えようとする力。しかし、
そうはさせまいとする力もまたより強まっている。農業に希望を見出すのはわたしも同じ。しかし、そういった希望あるものを真っ先に砕くのが放射能。
今、ものすごく悪い選択か、すこしマシな選択かの、2つしかない。人間は、長い年月かけて自然放射能への抵抗力をつけた。しかし、人口放射能はこれまでにない、自然放射能とは異なるものである。そのことをIAEAの医者たちは言わない。心まで汚染されていると思う。」
Q:学生「広河さんのスクールからたくさんのフォトジャーナリストが輩出され活躍されているとのこと。写真が上手くなる方法を教えて下さい」
A:広河「まずは写真撮影。チェルノブイリのこどもを対象に3日間の写真教室をした。キティちゃんカメラで、みんなびっくりするくらいいい写真を撮れるようになった。3日間の指導で撮れるようになるので、ぜひ来年この大学で企画して呼んでください(笑)。もちろん、それだけでは『いい写真』は撮れない、
フォトジャーナリストとしての態度、ものの見方を備えること。そのためにはいろいろ勉強しなくちゃならない。フォトジャーナリズムを教えるとき、皆さんに言うのは
『フォトジャーナリズムはあなた方が思っているよりはるかにかけがえのない、想像を超えた世界である』ということ。誇りをもって仕事をしてほしいと伝えている。」
【Information】
地球の上に生きる2012 DAYS JAPANフォトジャーナリズム写真展
第8回DAYS国際フォトジャーナリズム大賞受賞作品、他80点
会期:2012年10月24日(水)~11月11日(日)
時間:11:00~18:00 会期中無休
会場:
京都造形芸術大学ギャルリ・オーブ
京都市左京区北白川瓜生山2−116
京都市バス「上終町」すぐ/叡山電鉄「茶山」徒歩10分
入場料無料